■ 2009年12月19日(土)

 頑張れば夢はかなうか?


 「頑張れば夢はかなうとよく言います。だがそんなことは幻想だと思う。成功した人にインタビューするから、そうなるのであって、失敗者には誰も訊かないじゃないですか」(山田太一、日経ビジネスアソシエ:2008年2月19日号)
 山田太一さんのこの発言にインターネット上で賛否両論の大反響が起きたが、氏の発言には、もっと深い洞察があったのではないか?
 氏のインタビュー記録を検索すると以下のような発言がある。
 「『あきらめるな』とよく言います。だから誰でもあきらめさえしなければ夢がかなうような気がしてきますが、そんなことはあまりない。頑張れば何でもできると思うのは幻想だと僕は思う」
 から冒頭の引用に続き、さらに、
 「人間は、生れ落ちた時からものすごく不平等なんです」として、国籍や容姿を選べないことなどを挙げて、「限界だらけで僕らは生きている」と指摘している。
 そして、「そんなにうまくいかないのが普通なんです。その普通がいいんだと思わなければ、挫折感ばかり抱えて心を病んでしまう」
 「僕は一握りの成功者が『頑張れば夢はかなう』と言うのは傲慢だと思っています。多くの人が前向きに生きるには、可能性のよき断念こそ必要ではないでしょうか」

 「頑張りに歯止めがない。親は子を叱咤し、可能性のぎりぎりを極めさせようとする。本人もそれを受けて立たないと挫折感を抱いてしまう。大切なのは可能性に次々と挑戦することではなく、心の持ちようなのではないでしょうか。可能性があってもあるところで断念して心の平安を手にすることが肝要なのではないか。私たちはこの世界にも他人にも自分にも少し期待しすぎていないだろうか。たえず自他への不満をかかえ、追い立てられるように生を終えるのはみじめでしょう」

 この山田氏の言葉から連想するに、確かにここのところ首都圏の交通機関では、ほぼ毎日、人身事故がある。毎年3万人を超える自殺者が出るのは異常ではないだろうか?
 ちょうど2010年1月号の雑誌「てんとう虫」に掲載の山田太一氏のインタビュー記事(副題:澄んだ瞳で問いかける。いまをいきていくすべとは、「生きるかなしさ」を知ること。文=齋藤愼爾)に以下の節があった。
 「いま多くの日本人が目を向けるべきは、人間の<生きるかなしさ>ではないでしょうか。人間のはかなさ、無力を知ることだという気がします。人びとは人間の暗部を見まいと逃げ回っている。本来の意味での楽天性とは、人間の暗部にも目が行き届き、その上で尚、肯定的に人生を生きることだと思います」

 私もそろそろ自分の限界への挑戦と心の安らぎのバランスを考える年齢になってきた。この時期の私に取って、山田氏のインタビュー記事は珠玉の出会いといってよい。

 話題を変えよう。
 11月は精力的に活動した。11月の主要なアクティビティを以下に記録として残したい。
 11月14日(土)、久しぶりに銀座に出かけた。
 外出の目的の一つは、以前のコンサルタント時代にお付き合いのあった方との仕事の打ち合わせ。もう一つは、オーストラリアのメッセンジャーバッグメーカ「クランプラー」の直営店で掘り出しモノ探しである。
 この直営店で、Red Price(50% Off)のリュックをゲットし、銀座松屋のまん前に出たら、西の空が茜色から薄い雲に宵の帷が降り始めていた。
 携帯カメラではこの程度の写真しか取れなかったのが残念であった。

 11月25日(水)、新宿のマイクロソフト本社で開催されたMPUF(Microsoft Project User Forum)主催のセミナーに参加した。
 独立行政法人情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(IPA/SEC) 長谷部武氏が講師の「共通フレーム2007 第2版の概要〜超上流から攻めるIT化の勘どころ」である。
 https://www.mpuf.org/pm/es091125.htm
 このセミナーで、長谷部さんから紹介された「経営者が参画する要求品質の確保 〜超上流から攻めるIT化の勘どころ〜 第2版」PDF版(zip書庫)は、システム開発系プロジェクトの進め方についてIPA/SECが纏めたすばらし単行本である。

 11月28日(土)、第16回KIT読書会が開催された。課題本は、元NCR、MAC社にいた 原田泳幸著「ハンバーガーの教訓」、MACからMACへの転職で有名な方の本だ。
 今回のファシリテーターは、白石泰基さん。白石さんからメールで配信された事前課題は、以下の3つの質問であった。
 (1)1章〜3章(特に2章)を読んで、当時のマクドナルドの状況と社長の原田氏がどういう施策を行ったかを整理して下さい。
 (2)マクドナルドの成功のカギは何だったのでしょうか。
 (3)上記(2)の成功のカギは、マクドナルド以外の企業でも有効でしょうか。
 白石さんのインタビューが、金沢工業大学大学院のホームページに「先輩たちの声」と題して掲載されている。
 https://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/business/eb_voice02.htm

 (つづく)

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