■ 2002年11月18日(月)

 須崎宏一さんとその営業マン人生


Quote…Unquote: Don't judge each day by the harvest you reap, but by the seeds you plant. - Robert Louis Stevenson (Scottish novelist , 1850-94)

 毎日をその日の収穫高で判断せずに、まいた種で判断しなさい。


 国際新赤坂ビル東館1Fにある「文教堂書店」の前で須崎さんと待ち合わせた。
 「ヤ−」と小柄な体に大きな鞄を肩にかけながら現れた須崎さん(通称、スーさん)は、25年前に初めてお会いした時の人懐こい印象とほとんど変わらない。
 3年前に30年以上勤めた日本NCRを退社され、シスコシステムズに移られた時にも一度お会いした。
 先月、シスコシステムズのパートナー企業であるネットワンシステムの営業推進部長に転職され、3年前のその時と同じ焼き鳥屋さんのコース料理をご馳走になった。
 この須崎さんのエピソードは多い。
 私としては「その営業マン人生、レジェント」と題した本を執筆されれば間違いなくベストセラーになることを確信している。

 私としては、ゴルフの筆卸をしていただいたスーさん、西熱海カントリークラブでベストスコアーを出した時に同行していたスーさん、そして営業の現場では、対応されたある企業の部長さんに「本件に対するあなたの権限はどのくらいありますか?」と聞かれた時の須崎さん、他もう限りないくらいのスーさんがいる。

 須崎さんから「やさしい経営学、日本経済新聞社編」という文庫本を頂いた。お聞きしたところ、お世話になった人達にこの本を50冊配っているとのこと。
 この本の中身がすごい、いや重い。
 一橋大学の野中郁次郎教授を筆頭に経営学の重鎮が筆をふるっている。
 学界(アイボリータワーとも呼ぶ)の経営学論だけにとどまらず、企業を代表する以下の方々からのすばらしい内容のコンテンツも盛り込まれている。

 ・キャノン御手洗社長
  事業再編:キャノンの改革の狙い
 ・セブンイレブン鈴木敏文会長
  新事業を生み育てる:セブンイレブンの体験から
 ・日本アイ・ビー・エム大歳卓麻社長
  企業の国際化:日本IBMとIBM

 須崎さんは「シスコシステムの中では最年長だったよ。この年で来ないかといわれるのもありがたいことだし、請われてやれる仕事があるうちは頑張るよ」と言っておられた。

 松尾芭蕉の猿蓑集の巻六に収められている幻住菴記(藤沢周平「一茶」、文集文庫)から以下の文章を引用する。

 

かくいえばとて、ひたぶるに閑静を好み、山野に跡をかくさむとにはあらず。
やや病身人倦んで、世をいとひし人に似たり。
倩年月の移こし拙き身の科おもふに、ある時は仕官懸命の地をうらやみ、一たびは仏籬祖室の扉に入らせむとせしも、たどりなき風雲に見をせめ、花鳥に情を労して、暫く生涯のはかり事とさへなれば、終に無能無才にして此一筋につながる。

  

 一茶は生涯において2万句という俳句を残している。晩年に至っても二百、三百句を毎年つくり続けたという。
 その彼が「終に無能無才にして此一筋につながる」というこのくだりを糧にして俳句をつくりつづけたという。

 (つづく)

-P.48-

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