■ 2004年7月25日(日)

 フローラン・ダバディと野澤 優子さん


Reference: As long as persistent you can't go wrong. (Keinan Iwamura, NHK Let's Speak English)

 NHK Let's Speak English 7月号テキストの巻頭にフローラン・ダバディさんのインタビューがあった。
 彼は日本では、ワールドカップサッカー日本代表チーム監督フィリップ・トルシェの通訳者として広く知られているが、当時の彼の時間の一割程度を占めるくらいの仕事だったそうだ。
 デビ・コリスさんのインタビューに答えている内容が大変興味深いものなので、ここに一部ではあるが和訳も含めて記録しておきたい(訳は伊藤奈摘子さん)。

 How would you describe yourself and your career?
 ご自身やあなたの職業について、ご自分ではどう言い表すのでしょう?
 I think everyone is a human being first. I am an existentialist. I believe that people are so weak and small that it is actually very sad to be a human being. But that is our condition.
 It is a bit of a game to create a rounded image that incorporates all of your interests. But that is the essence of art -- to kick start the curiosity of those who listen. There is no aim or definite goal. It is about provoking a reaction.
 誰だって、まずは人間です。僕は実存主義者なんです。人間は弱く、ちっぽけな存在であり、人間であることは実際とても悲しいことだと思う。でもそれが人間というものなんです。
 自分の趣味をすべて表現するような完璧な自己イメージを作り出そうとすることは、一種のゲームみたいなものです。でも、それこそが芸術の本質なんです。つまり、人々の好奇心をかきたてようとすること。特に何のためということもなければ、これで終わりということもない作業です。リアクションを引き起こせるかどうか、それが大切です。

 How easy is it to live in Tokyo with such a philosophy?
 そういう考え方を持ちながら、東京で暮らすのは簡単ではないですよ?
 As an existentialist, I am in love with this town, its density and the concentration of people. Many people say Tokyo is so dirty, has no order and no beautiful architecture but I am a city boy. There is chaos but like to see a big skyscraper in Shinjuku and then a small old house next to it. It is an artistic shock.
 実存主義者として、僕はこの街に恋しているんです。この密度や人間の濃度というものにね。多くの人は、東京は汚い、秩序もなく美しい建築物もないと言うけれど、僕は都会っ子だから。確かに東京は混沌としていますが、新宿の巨大な超高層ビルのすぐ隣に小さな古びた民家が立っている、そんな光景を見るのが好きなんです。
 一種の芸術的ショックですよ。

 彼はこれまでに200カ国を旅してきたそうだが、「旅行すればするほど、どこの国も同じなんだと思うようになりましたね。どんな人間も、まわりの環境や文化に影響を受けます。でも、個人の生活は影響されても、国家の風潮は影響を受けないのです」とのことである。

 このダバディさんのインタビュー記事を読み終えて、メールをチェックしていたら、2004年7月現在は青森県に在住の野澤 優子さんからの返信が届いていた。
 実は、この見聞録の2004年4月9日号で掲載した「The Ubiquitous Flipside Experience」にあるDavid Helfgottをインターネットで検索したところ、この野澤 優子さんのホームページに出会ったわけだ。
 彼女も旅の記録とともにデヴィッド・ヘルフゴットのコンサートの記録を自分のホームページに残していらっしゃる。

 おりしも、右写真にあるCDをアマゾン・コムで見つけて、そのCDが届いたところである。
 このCDの1曲目に映画シャイン(1995年)「アレグロ・マ・ノン・タント」(第1楽章)〜ピアノ協奏曲第3番ニ短調、Op.30(ラフマニノフ)が収録されていて、このピアノがデヴィッド・ヘルフゴットなのである。

 シャインもゆったりとした情緒的な曲だが、なんとも暖かい、このCDのジャケットに微笑んでしまった。
 野澤 優子さんのホームページは(http://www1.ocn.ne.jp/~yukomoo/)にあります。

 (つづく)

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